![]() あらすじ:線路に落ちた酔っ払いを助けた男に、 戸惑いながらも手を貸した刹那、電車が入って来てしまう。 「死んだ」と思った瞬間に、男と共にマンションの一室へ。 状況や理由を知らされぬまま、黒い球体に闘いを強要される。 ドイツ語っぽいタイトルと、白い内壁の部屋中央に 黒い球体を据えるキューブリック風画面に惹かれて観た。 闘う相手は星人(地球外生物?)だが、 ヒトがそれぞれの正義感、愛情、友情、存在意義獲得などで 殺傷やむなしと立ち上がる姿に複雑な感情が生まれれば大成功 といった作品のように思えた。 最後のメッセージは主人公個人のものかもしれないけど、 万人に不足の無い回答。 そのわかりきっている答えを避けるかのごとき競争社会を批判し、 異質の存在を排除する一方的な態度について考える必要性を 訴えていると感じた。 観た後、様々な角度から感想を言い合える良作。 以降はネタバレの恐れもある話を。 PR ![]() 『戦場でワルツを』 あらすじ: 1982年のレバノン内戦から30年ほど経った現在。 兵士として加わった主人公の元に同朋が現れ、 当時に関する示唆的な夢を見るようになったと打ち明ける。 彼は夢の意味を探るため 抜け落ちた記憶を補完しようと訪ねて来たのだが、 それをきっかけに同様の夢を見るようになった主人公にも やはり抜け落ちた記憶があった。 この後、カウンセラーのアドバイスに従って 記憶を掘り起こすべく同朋を訪ねて行く中、 封印されていた出来事として サブラ・シャティーラの虐殺が描かれる。 加害者であるイスラエル側が制作した事自体は画期的だけれど、 アニメという表現法と残忍さを避けた描写に甘さを感じた。 しかしながら、お上の指令によって戦地に赴く兵士が受ける 精神面での傷の深さを考えると必要な気遣いかとも思う。 『Dr.パルナサスの鏡』 あらすじ:鏡を使って幻想を具現化させるパルナサス博士。 実は悪魔と契約を交わし、永遠の命を得ていた。 引き換えに娘が16歳の誕生日を迎えたら差し出すという この契約を後悔し苦悩していた所に悪魔が現れ、 どちらが先に5人取り込むかの勝負を持ちかけられる。 博士も「吊るされた男」も悪魔も、 人の欲を利用して対価を払わせる点では同じ。 必ず二者択一が用意され、 選んだ本人に責任を取らせるのも同じ。 騙す事を商売にしている手品師には罪が無い。 彼の扮装・役割は道化師 (タロットカードでの意味は無知、無垢)。 人間は騙されるのを楽しむ生き物でもある。 『JOY DIVISION』 ジョイ・ディヴィジョンのドキュメンタリー。 イアン・カーティスを中心に描かれているのは その存在が大きかったからに違いない。 なぜボーカリストには様々な責務が負わされてしまうのか。 あるいは、そのように仕向けられるのか。 歌にはそれだけの力があるという事か。 『ドッペルゲンガー』 脊髄を損傷した人の手足となるマシンを 開発・研究する天才科学者に、 対称的な性格の自分自身(=ドッペルゲンガー)が現れて って所までは『ジキルとハイド』的。 もう一人の自分を片付けてから人格が変わって 粗野な部分が加わったように見えたけど、 冒頭からそんな感じだったのを思い出した。 怪奇現象としてホラーっぽく怖がらせる見せ方と、 科学的に脳が見せる像として扱うのと、 平行させているようで面白かった。 ![]() WOWOWの『トラウマ映画館』企画での4作を一気に観た。 *** 『不意打ち』 あらすじ: 腰を悪くして歩行の難しい、豪邸に住む中年の婦人が 電気系統の事故により、自宅エレベーターに閉じ込められる。 非常ベルを鳴らしても助けは来ず、 次々に現れる無法者に暴虐の限りを尽くされる…。 登場人物全員の善の部分をチラつかせながら 悪~い部分を見せて行く構成にまんまと捕まって 最後までドキドキして目が離せなかった。 トラウマっていうか、忘れられない作品。 被害者である婦人も実は××(ネタバレ防止にて伏せます)で、 この作品当時(1964年)から「モンスター」と表現してたのかと、 変な所で興味湧いたりして。 『裸のジャングル』 あらすじ:19世紀アフリカ。白人のハンターに雇われたガイドが 行きがかり上、現地人に命を狙われて決死の逃亡。 ま~、白人のハンターが傍若無人で野蛮人。 容赦無く動物を殺すシーンには目を覆うほど。 彼らはそれ相応の罰を受けた一方、 ガイドを務めた人物(同じく白人)は 現地人に敬意を払っており、与えられた罰は 同族が裏切った時にも通じそうなものだった。 あっさりしたラストから、そんな感じがした。 「命からがら」の連続で、観てて疲れた。 『質屋』 あらすじ:妻子をナチスに殺された元大学教授。 人間不信となった彼が経営する質屋には 様々な社会的弱者が訪れて 救いを求めるように情に訴えかけるが、つれない態度を貫く。 しかし、忌まわしい記憶がフラッシュバックして…。 質屋の構造が彼自身を表しているとも思えた。 何を預けて何を得たのか。 預けたものは何で取り戻せるのか。 …こう考えるともっと複雑か。 思い出せとばかりに 抑圧した記憶を引き出すような人物や状況が続く。 最後には自我が崩壊したように見えた。 あまりに衝撃の強い、受け止めきれない現実は 再び封印、あるいは克服出来るのだろうか。 『フェイズⅣ 戦慄!昆虫パニック』 あらすじ:高度な知能を得たアリと科学者の戦い。 SFにエロと機械は切り離せないね。 独特のムッツリ具合がおもしろい。 最後なんて変に儀式ぶってて、 「そんな高尚に!?」って笑っちゃった。 元来のアリの生態を残しつつ、知能を高めた事で強化させた分野が ヒト的だったり寄生虫的だったりと、恐怖や混乱を呼ぶポイントが 見えて「へ~」などと分析。 ![]() 『切腹』 江戸時代始めの頃、お家取り潰しが続いた。 主人を失って貧しさに苦しむ浪人は、 裕福な大名屋敷での切腹を願い出、 面倒から金子で追い払われるのを見越した 「狂言切腹」で食いつなぐほどであった。 武士の精神を持っていれば相当に屈辱的な行いだが、 それほどに貧しかったのだろう。 しかしそれがゆえに誰にも相談せず、 度を越した見せしめの犠牲となった人物の 悔しさは想像を絶する。 「窮状を理解しないお上」は現在でも変わらない。 最後、仲代達矢演じる津雲半四郎が斬ったのは 慈悲の無いその屋敷の主人では無く、別のもの。 実の仇はそれだよね、うんうん。 忠誠を誓う対象を持つのはいいけど権利の乱用はダメだ。 約50年前の作品だから 大御所役者さんの若かりし頃も観られて興味深い。 清水健太郎そっくりだと思ってクレジット見たら三國連太郎、 じゃあ佐藤浩市はお母さん似?とか(下らない)。 丹波哲郎のドッシリした迫力や岩下志麻の存在感も見所。 『僕と妻の1778の物語』 現実感の薄い小説家とそれを理解し支える妻。 突然のガン告知で「僕が妻にしてやれることは」と 思いついたのは一日一作、小説を書くことだった。 SF作家だから夢想家って訳でも、 幼稚なイメージばかり湧くって訳でもない気がして、 そういった演出が出て来る度に興ざめして 涙が引っ込んだりしたけれど、 原作者と思しき人物が登場した時に なぜか腑に落ちた。他のシーンでは 二人が愛し合っていると伝わって来たし。 結婚は愛してる人とするのが一番だと思った。 お別れ(=死)の辛さも受け入れた上で。 『ハンサム★スーツ』 ブサイクだと虐げられる男が ハンサムスーツを着てハンサムに変身! 軸はこれ↑だけだし、極端な人物設定だし、 悪役は名も無い一般人に任せてるし、 エンディングすんなりだしで、 特に重みも何も無いんだけれど、 普通一般に、恋愛に臆病だったり、 素直に恋人の胸に飛び込んでいけなかったりする人達の 葛藤や悩みをバチッと表現している作品に思えた。 表面だけを見て判断しないという教訓は この作品自体にも敷かれている。バカに出来ない。 谷原さんが塚地さんの演技を完コピ。すごい。 佐田真由美のサイボーグ的美貌もすごい。 おかげでミスリードに乗ってしまった (ハンサムの正体を探る理由を深読みさせられた)。 バンドブームの頃に流れていた音楽 (ユニコーン「大迷惑」米米クラブ「Shake Hip!」など)が 場面を盛り上げているのも楽しめた。 *一部敬称略失礼 ![]() 『雷桜』 蒼井優ちゃん演じる雷(らい)は自立していて逞しく、 芯の強さが素敵だったけれど、 乳母無しであんなに丈夫に育つのか疑問。 主の目の前で許可無しに抗議の切腹&敷地内を血で汚したら 結構な大罪なんじゃないか?という疑問も 柄本明さんの熱演を邪魔した(観終わってしばらくしてから 切腹に至る理由わかったけど、それじゃ遅い)。 岡田将生さん演じるヘナヘナな殿が刺客を向けられた経緯は 説明されてるのに該当シーンでパッと繋がらなかったり、 どうも世界に溶け込めずスムーズに観る事が出来なかった。 重要な存在なのにハリボテ感たっぷりの大木に興ざめしたのが いけなかったのかもしれない。 『ダブルフェイス 秘めた女』 サスペンスとの説明に騙された。オカルトじゃん。 ソフィー・マルソーとモニカ・ベルッチのダブル主演を 安易な発想でムリクリ映画にした感じ。 美しい顔を歪ませて楽しむのも悪趣味だ。 制作者のコンプレックスが透けて見えるようだよ。 切ない心の動きを表現するのに必要な映像技術とは 思えなかった。役者と技術の無駄というか。 『十三人の刺客』 侍としての本懐、生き様、死に様とは何であるか。 その問いへの回答が二手に分かれたように思えた。 なぜあの二人だけが別の結末を迎えたかも難しくなく (ヒント:『葉隠』※)、単純な構造でわかりやすい。 印象に残るセリフの数々や 松方弘樹さんが別格な美しさを見せた殺陣も素晴らしく、 約二時間半があっという間。 主役級の役者が沢山出演すると散漫になったり、 アイドルの御輿担ぎになってしまう作品が多い中、 この作品には燃えた火照った。 オリジナルも観たい。 ※私個人の解釈です。 『キック・アス』 上手いなー。 様々な角度から上手いと思った。 社会ではなく、 それを構成している人間に向けられた批判が ところどころに伺えて知的。 ![]() ![]() 忍者ブログ | [PR]
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