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『さまよう刃』
娘を殺された男の復讐譚を周辺人物の心情や
現在の若年層が持つ自己中心性にも触れて冷静に描き、
単純な勧善懲悪で済まない
複雑化した人間社会を真正面から見ているようだった。

ラストは犯人が憎過ぎて甘さや美しさを感じたけれど、
男が分別を保っていた証明だから、納得せねばだな。



『蛇にピアス』
痛みでしか生きている実感を得られない女と、
彼女を巡る2人の男の物語。

ピアッシングや刺青、SM志向のセックス、
路上での暴力沙汰など、一般には無縁と思われがちでも、
居酒屋や焼肉店で普通に飲食している場面を挿し込む事で
壁一枚も隔てない世界であると表現する。
それが良くも悪くも、凡庸な少女マンガ風物語
(女1人を男2人が熱烈に愛す。これだけで十分陳腐)の
薄っぺらさをも浮き出させていた。
未読だが、役者の熱演と優れた演出で語るに足らない原作と推測。

妙に豪華な脇役陣に首をかしげた。
番組表で調べたら監督が蜷川幸雄さんだった。
なんちゅうもったいない事を。

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