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春先。
普段と違う、
少し離れた仕事場(ビニールハウス)での作業を命じられた。
一旦自宅に戻ってお昼休みを取るシステムの会社なのだが、
それに乗るには少々慌しい為、
比較的近所の母の家で過ごす事にした。
当日は脅えて震える人見知りの飼い犬と
『いいとも!』を交互にウォッチングしながら、
預けておいた美しきニンジンを使ったシチューと
16穀パンを食べ、麦茶を飲み、仕事場へと戻った。

今まで、母の暮らす家に立ち寄りはしても、上がりはしなかった。
約30分の滞在は十分に非日常であったらしく、
数日後、神妙な面持ちで告白された。

母:さわだちゃんがいなくなったら、大きな穴が開いた感じがして、
  食べ終わった後の食器見ながら、
  夕方までお勝手でボーッと立ってた。
  小さい頃に私が何も言わず家を出てった時、
  さわだちゃんもこういう気持ちだったのかと思って動けなかった。
  いつ帰るとか、何も知らされずに置いて行かれて、
  さみしかったんだろうなって
私:「さみしい」っていうのが、実感としてはわからない。
  いつも一人でいたし、いないのが普通だから、
  長時間誰かがいると「うるさい」ってなる。
  家出は何度もあったから「またか」って感じ。
  初めていなくなった時も別に何も感じなかった。
  でも、そういうこと感じたんだ。へー
母:うん、だからこんなに冷たい人間になっちゃったんだなって
私:なんだよ、感動しかけたのに余計な一言(笑)

この事があった何日か後、映画『ラースと、その彼女』を観た。
偶然にも似たシーンがあり、兄の告白を受けて以降、
人を避けて暮らして来た弟が劇的に変化して行くのだが、
私の場合は余計な一言によって変化しきれないようだ。残念。
母が自分以外の立場でものを考えたってだけでも、
大きな驚きだったけれど。

余談1:上に挙げた映画でのお気に入りシーンは序盤、
教会での礼拝を終え三々五々帰って行く人々の中、
人嫌い・女っ気無しの弟を気遣って「女性にあげなさい」と
年配の女性に渡された花束をアレするシーンである。ツボ。

余談2:母のボーイフレンドである‘近所のじじい’が
待ち伏せて物陰から私を覗き見、
「見た。蒼井優だ蒼井優。20年若かったら結婚したのになー!」と、
目の腐った感想を母に告げたという。
娘が昼休み家に来るとか、そんな事まで話さんでよろしい。
まったく、何故母親は子供の話を第三者に遠慮なく話してしまうのだ。

話を戻す。
母の家出によって冷たい性格になった、という訳ではないと思う。
生まれたばかりの頃から既に‘泣いて親を呼ぶ’事をしなかった。
生後2日で死にかけたのは、母から私を取り上げた(*)祖母が
近所を連れ回している間、全く水分を与えなかった為に
脱水症状を起こしたからだが、その時も泣かなかった。
本能的なSOSすら出さないのは怠慢か外界への諦念か。
とにかく、自分の感覚や感情を表現するのに消極的なようである。

*出産を手伝ったのではない。文字通り「取り上げた」。

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