![]() 退院してから父は毎日、筋力回復も兼ねて 雪の重みで倒れた桃の木を中心に 庭の手入れをしている。 家には塀が無い。 連休だった先日、 小学校に入ってるか入ってないかくらいの子供が 父に「おじいちゃ~ん」と話しかけた。 私は自分の部屋(二階)から、 子供に話しかけられる父という珍しい事態を 聴覚のみで楽しむ事にした。 父は11月で63歳。孫はいない。 姉弟と思しき幼い二人に 二回ほど「おじいちゃん!」と呼ばれて やっと反応していた。 時刻はお昼近く。 無邪気に話しかけ続ける子供に辟易している様子が 手に取るようにわかる。 父が子供を寄せ付けない事は、 実の子である私がよく知っている。 それでも他人の子に「ほっといてくれ」と言えるような 強い性格ではない。 少しずつ距離を取って部屋に戻ったようだ。 追うように二人の子供は声を合わせ、 「おじいちゃ~ん!」とアンコール。 おもしろい。 翌日も庭仕事に精を出す父。 懲りずに再度、幼い姉弟が声をかけた。 「おじちゃーん!」。 何かに気付いて呼び方を変えてみたのか。 知恵があるな。 続けて「落ち葉がいっぱいだね~」。 父は返事をしない。 子供は「聞こえないのかなあ?」。 どこまでも素直である。 もちろん父は聞こえないフリをしているだけだ。 そこへ知人らしき人物が通りかかって父に話しかけた。 にこやかに答えている。 なんという対応の差であろうか。 しかし作業中に話しかけられるのは私も嫌いで、 大人も子供も関係無く「シッ」とやりたかったりするので、 理解出来ない行動ではない。 父はかつて米穀店を営んでいた頃に 「家族に愛想良くしたって金にならねぇからな」と 言い捨てた程、損得勘定が見える人である。 それは「元々口下手で無愛想だから仕事だと思わないと」 の別表現であり、損得勘定も含め、 性格はもう性格であるからして、批難する気は無い。 傷付ける言い方をするから‘口下手’なのだ。 子供は敏感だから、 そういう性格であると知ってからは、 遊び相手になってもらおうと近づいたりしないだろう。 せっかく素直に育ってる子供の性格が 今回の父の対応で歪んでしまわぬよう、祈るばかりである。 PR ![]() ![]() 忍者ブログ | [PR]
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