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KERA・MAP #6『グッドバイ』(紹介ページ

2015年9月26日(土)世田谷パブリックシアター
1FB列11番

開演前にパンフを買っても内容量の豊かさにより、
読んでる途中で始まったりするもの。
今回はケラさんが太宰作品を取り上げる珍しさと、
小池栄子さんのコメディエンヌぶりを直接感じたくて参上。
他は頭に無かったので、大女優さんの貫禄を持った、
キリッとした奥様役が水野美紀さんと気付いた時は驚いた。
太宰作品への雑なイメージとして
内面偏重の深刻さを思い浮かべていた
(その深刻さが笑いを呼ぶような作品に仕上げるのではないか?
 との推測で出向いたことも理由のひとつ)が、
これは期待以上の作品なのでは、と嬉しくなった。

簡単なあらすじ:
文芸雑誌『オベリスク』編集長・田島(仲村トオル)は
闇商売にも手を出し多額の収入を得、
妻子を持ちながら多数の愛人を抱えていたが、
その闇商売をやめ、愛人を切り、
妻子を疎開先から呼び戻そうと考える。
知人の文士・連行(山崎一)は愛人たちに
とびきりの美人を妻として伴い、
「グッドバイ」を告げて回るのはどうかと進言する。
田島はその案に乗り、闇取引の場で見かけた
怪力で大食いの美人・キヌ子(小池栄子)を高い報酬で雇う。

美人を連れて行けば大人しく別れを受け入れるだろうとの発想が
ダサくて呆れ返る。私の父は妊娠中の母を連れて
「こういう事だから」と、
二股かけていた人妻に別れを切り出した。
母にもショックを与えて流産を目論んだのかもしれないが、
別れ話くらい自分ひとりで出来ないのかと、情けなく思った。
パンフレットでも田島の優柔不断さについて語られている。
観ながら「こういう無責任な人(いいなりの面がある)に
自分の価値を見出してしまう人が”だめんず”なんだろう」と
考えていた。
自分の意思で決めず、
他者を理由にして負うべき責任を丸投げする、
そういう不誠実な人間には魅力を感じない。

男性側を底が浅く幼稚に描く一方、
登場する女性達は皆、しっかり者で依頼心が無い。
優柔不断な田島が愛人たちに次々と、
すんなり別れを受け入れられる(具合を悪くする女もいたが、
すぐに次の男が現れる)のはリアリティに富んでいる。
男の理想を演じる女が登場しないのも良かった。
このあたり、
ケラさんが女性を描くのが上手いと評される所以かと思う。

観終えて、やはり小池さんは素晴らしい。
男女問わず美しい人は笑いとの相性が悪い
(自分を下げる事になるので無理してるように映るし、
ガッカリもされる)ものだけど、抵抗なく笑わせてくれた。
池谷さんは名優の域。拝んでしまいそうだった。

奇をてらうような起伏の激しさが無くても
惹きつけられ続ける強さがあった。
読売演劇大賞「最優秀作品賞」受賞も納得である。
その権威の程は知らないけども、表彰したい作品。
観に行って良かった。

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