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出来心なのだ。
ミーハーなのだ。
「だいたい半年で飽きる」と評判の鳥肌実の舞台は、
初見から半年以上経った今でも相変わらずおもしろい。
「九州では‘先生’と呼ばれている」、
しかし「インストアイベントの握手会で殴られた」、
こんな二律背反の土地が生み出す演説会の雰囲気はどんなものか、
興味を抱いてしまったのだ。
中でも熊本は母の出身地であり、
祖父母もそろそろヤバイってんで里帰りを強制、
参戦に付き合ってもらう事にしたのだが、これがマズかった。

公演日が決定したのは7月上旬。
航空運賃の大幅割引には間に合わなかった。母がごねるのだ。
仕事上色々あるらしいが、
そこは代わってくれる人がいるので問題はないとして、
いつからいつ休むのか、ず〜っと悩んで答えを出さない。
一旦答えを出しても覆し、「どうしたらいい?」と訊いて来る。
付き合ってもらう私は何も言えないっつうの。
この繰り返しで伸び伸び。
やっとこさ航空チケットを予約。
が、「高い」と飛行機では行かない事になった。
「じゃあ何で行くの?」
「フェリー」
さあ、フェリーだ。ネットで調べ上げる。
母はフェリーで熊本へ逃げるのが夢なのだ。その予行演習でもある。
あとはチケットを買うだけ、まで進んだが、
既に残っているのは大部屋だけだった。
「雑魚寝は耐えられない」とフェリーでは行かない事になった。
「じゃあ何で行くの?」
「ブルートレイン」
さあ、ブルートレインだ。
今度は素早く切符を購入。私はカードで支払う。
しかし、あまりにも早い決断に不安がよぎる。
行きが喫煙可、帰りが禁煙の車輌なのだ。
私はタバコの煙が全くダメである。
タバコでなくても、換気の悪い場所に長時間いられない。
けれども、他に方法がない。喫煙席でも文句は言うまい。
しかし母は逆に禁煙。気が遠くなるほどの乗車時間を考え、
ジワジワと来たのか、キャンセル。
いくら大人しい私でもさすがに頭に来た。母は言わせるに任せている。
「どうしてケチってんのにキャンセル料払わせんのさ!ムダ!」
最初から飛行機にしとけばいいんだよ…。

次は泊るとこ。
母も私も、実家に行くのは嫌だったのだ。
自慢ではないが、母の生い立ちは不幸である。
九州は男尊女卑の国であり、
祖父母の抱く理想から外れた母への仕打ちはひどかった。
家を出たのは15歳。理解し合う事もないまま、現在に至っている。

里帰りする度に「子供(私)を連れて来るな」と祖母は言う。
離婚しているからだ。
祖母はひどく世間体を気にする人で、
価値観は人間性を無視したものを備えている。
つまり見栄っ張りである。相手にするのは難しい。
そういったわけで、私は父だけの子ではないはずだが、
歓迎されていないのはよくわかるので、
「叔母のお世話になろう」という事で、
そのように連絡を取ってもらっていた。のだが。
どうにも時間が合わないのと、
気を遣わずゆっくり過ごしたかった私のワガママと、
母の「親に連絡するなら行かない」との理由が重なり、タダ寝は断念。
ホテルに予約を入れる。
安いビジネスホテル。何度も確認をしたので大丈夫。と思った。

飛行機、ホテル、何一つ節約できてない。
ケチケチ旅行じゃなかったのか。
出発は13日。仕事は午前中までの早退。お昼をゆったり過ごす。
家を出ると小雨が降っていた。しかし私は晴れを呼ぶ女。
心配はしない。
案の定、駅に着く頃に雨は止んだ。うぅ、寒い。これじゃ風邪引く。
天気予報によれば熊本は晴れ。
温度差で体調が崩れる予感たっぷりだ。
順調に電車を乗り継ぎ、飛行機でブーン。はい、到着。ムシムシ。
熊本の駅前からホテルまで歩く。
うわ、と言葉を失う。単身赴任か、私達は。
中途半端に古めかしいホテルに驚きながら部屋へ。
カギを入れる。開かない。開かない。
母が「ちょっと呼んで来る」とフロントへ。
開け方を伝授され、中に入るとこれまた狭い。…替えてもらおう。
普通に開閉できるドア、広い部屋へ。お姫様なのよ、アタシ達。
金ないくせにプライドは高い。
広くはなったが備品のまた少ない事。
これじゃあアダルト番組見るしかないよなぁ。
しかしチャンネルがわからん。
どれがこっちで言うフジテレビなのか。新聞、はない。
しょうがないな〜、風呂でも入るか。ド、ドライヤーがない…。
「盗む人がいるんじゃないの〜?」ってなわけで、借りる。
新聞と飲み物も仕入れ、明日の予定などを話し、就寝。

明日はとうとう公演だ。
ネット上でお世話になっている方とのご挨拶もある。ドキドキだ。
しかし既に、人に会うのが嫌になっていた。

***

罪のあるなしに関係なく、罪悪感は生じるのだ。

連日馴れない人間とコミュニケーションを取ると‘人疲れ’を起こす。
前回はひとりになりたくて海までトコトコ歩いて堤防に腰掛け、
二時間ほど広い世界を眺めて精神安定を図ったのだが、
今回はそれが全くできない。
こんな不安定な状態で人と会ったら何を言うかわかったもんじゃない。
(ネット上でお世話になっている方との予定があったのです)
携帯のアンテナは1本も立っておらず、これはマズイ。
ネットカフェを探そうと思いながらも、「別に私がいなくてもいいか〜」。

公演日の朝、母は叔母の家で歓待を受けるため、
10時にホテルを出た。
私はグダグダと昼まで過ごし、
フロントからの掃除勧告を受け、出たくもない外に。
昼に似つかわしくない服装(非カジュアル)で歩く、歩く。
歩くの大好き♪
非カジュアルの靴擦れさえなければ…(泣)
皮のサンダルを素足で履くからだよ、バカ。

駅ビルの本屋でさくらももこのエッセイを二冊買う。
これでひとりになれる。
わずかな安心を得て再び歩く。バスに乗るくらいなら歩く。
足は痛いが、歩きたい。
ズンズン目的もなく歩き続けるが、慣れぬ土地で不案内な為、
人の少ない路地に出られない。
う〜ん、通り町まで出てもネットカフェが見つからない。
そういえば去年叔父が「100円ショップが出来た」と喜んでいた。
うぅ、まだないのか…?
時刻は午後二時過ぎ。
映画でも観よう。並ぶ映画館のタイムテーブルを眺める。
観たい作品は特になく
(『ピンポン』観たかったのに、午前中の1回上映だった)、
中途半端に時間が空いてしまうが食欲はゼロ。
足は痛むし、歩きたいけどもうやだ。

『竜馬の妻とその夫と愛人』を観る事にした。
上映までの1時間、ロビーで読書。
掃除のオバちゃんが忙しなく働いていた。
やっとこさ観賞。
ぬ?なぜお前は私の視界を遮るか。
後ろから彼女にとか、そんなんだったらホテルへ行け。
うるさい、なぜお前らは上映中に無関係な話が出来るんだ。
歌うんじゃないよ。
なんだよ、ブーブーとブタ鼻鳴らしやがって。小屋に帰れ。
そんなのが気になったのは開始後10分ほどで、後は映画に集中。
おもしろい。
下ネタの少ないコメディにして良かった。
『オースティン…』を選んでたらと思うと恐ろしい。

映画館を出、近くのデパートの待合で本を読んで時間を潰し、
会場に向かった。
開演30分前。

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